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過去に和解をしている場合の過払い金返還請求
1 過去に和解をしている場合と過払金返還請求
過払金は、10年を超えるような長期間にわたる貸し借りの中で徐々に払い過ぎとなる金額が増えていくものです。
10年もの期間があれば、その間様々な状況の変化があると思います。
過去に返済が滞るようになり、返済条件等について貸金業者と協議の上何らかの合意をしているケースにおいて、過払金の請求にどのような影響が出てくるのかについて、以下ご説明したいと思います。
2 具体例と貸金業者側の対応
例えば、過去の契約通りの計算上100万円の債務が残っている状態で返済を滞納してしまい、残債務が100万円あることを確認、それ以外の条件の変更はないものとして貸金業者と合意したとします。
ところが、引き直し計算(利息制限法の利率に従った再計算)をしてみると、既に債務はなく、むしろ30万円の過払金について返還請求ができていたはずだった、ということがあります。
借主の立場からすると、なかった借金について「返済します」いう内容の合意をしたともいえます。
他方、貸金業者側とすれば、「当初の契約に従って残債務についての合意をしたものだ」と主張しますし、合意書面の内容にもよりますが「他の債権債務がないことを確認する」旨の条項が盛り込まれていることも多いため、「合意の際、過払金も含めて債権債務がないことを確認しているのだからもはや過払金の請求はできない」等と主張してくることが多いです。
通常、過去に合意をしている事案において、裁判外で支払いをする旨の提案をしてくるケースは少ないので、過払金を請求する場合には、裁判をするしかないことが多いです。
3 争点についての攻防と裁判実務
⑴ 裁判上では、そもそも合意自体有効かどうか、という視点で主張を進めることがあります。
民法上の和解においては、互いに譲歩することが条件とされています(民法695条)。
貸金業者は上記の具体例等、そもそもの債務額の確認をし、返済条件はそのまま、あるいは月々の支払い額の減額等という合意をしていることが多いといえますが、こういった合意は、少なくとも債務額に関して貸主側の譲歩がない、と評価することができます。
そうなると、そもそも「民法上の和解といえない」といえる可能性があり、実際に和解であると認めなかった裁判例もあります。
⑵ 次に、和解それ自体は民法上の和解であるとしても、「借金がない(もっと少ない)と知っていればそもそも合意なんてしなかった」ということもできます。
通常、借主側は法律に関して詳細を把握しているわけではなく、過払金の存在を知らずに不利な合意をしてしまっている状況からすると、誤った前提事実を前提とした合意といえ、錯誤による無効(改正前民法95条)を主張する余地があります。
4 弁護士にご相談ください。
上記のとおり、過去に合意がある事案における過払金請求については、基本的に裁判をすることになるといえます。
法律上本人訴訟が認められていないわけではありませんが、適切な裁判対応、主張を行うためにも、弁護士に相談されることをおすすめします。
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