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過払い金返還請求における悪意の受益者
1 悪意の受益者とは
用語だけ聞くといかにも悪そうなイメージを持ってしまいますが、ここでいう「悪意」というのは、わかりにくい法律用語の典型例といってよいものです。
法律上の「善意」「悪意」というのは、「ある事実を知っていること」「ある事実を知らないこと」をそれぞれ示しています。
したがって、「悪意の受益者」というのは、「ある事実を知ったうえで利益を受け取った者」という意味になります。
民法704条は、「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない」と規定しています。
この利息が認められるか否かについて、過払い金請求事件では重要な意味を持ってきます。
過払い金の返還を年単位で行ってこなかった貸金業者は、悪意の受益者と認められると、過払い金に加え、場合によっては高額の利息を支払わなければならないことになるためです。
2 最高裁における判断
悪意の受益者であるか否かについて、平成19年7月13日の最高裁判決が主導的な判例とされ、現在も基本的にはその判例の枠組みが踏襲されています。
参考リンク:裁判所・平成19年7月13日最高裁判決
簡単にまとめると、①みなし弁済(旧貸金業法43条)の規定の適用がない場合には貸金業者は悪意の受益者と推定される②この推定を覆す特別な事情が認められた場合(貸金業者がその証明をした場合)にはこの推定は覆り、悪意の受益者ではないものとなる。
別ページで説明していますが、①は平成18年に出された別の最高裁判決によって、ほとんど適用される事例はなくなったと評価できます。
②についても、特に平成23年12月に出された最高裁判決によって、基本的に特別な事情が認められることはないといってよい状況といえるかと思います。
3 裁判での対応
上記2のように、悪意の受益者か否かについては、裁判実務上ほぼ結論が出ている争点と評価することができる状況といえますが、多くの貸金業者は、現在でも裁判上で必ずと言ってよいほど主張してくる争点です。
きちんと対応していけば通常大きな問題とならない争点といえますが、適切に対応していく必要はあります。
一部の貸金業者については、「組織体制が整っていた」こと等を根拠に悪意の受益者ではないと主張してくる場合もあります。
そういった相手方の主張に対しても、しっかり反論していけば、悪意の受益者であるという推定はなかなか覆るものではないといえます。
4 弁護士法人心での対応
当法人では、これまで多数の過払い金返還請求事件を取り扱ってきました。
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