過払い金返還請求のメリット・デメリット
1 過払い金返還請求をするメリット
過払い金返還請求が認められれば、数十万円、数百万円の返還が認められる場合もあります。
現金を受け取ることができるというのは、過払い金返還請求の最大のメリットといえます。
2 過払い金返還請求のデメリット1~信用情報~
過払い金返還請求のデメリットとして、信用情報が傷つく場合があるということが挙げられます。
もっとも、信用情報が傷つく場合があるのは、あくまで過払い金返還請求をする相手方に対して、現在も返済が残っている場合に限られます。
つまり、完済後の過払い金返還請求であれば、このデメリットはありません。
3 過払い金返還請求のデメリット2~社内ブラック~
信用情報というのは、JICC、CIC、KSCといった信用情報機関で管理されており、信用情報に傷がつくというのは、信用情報機関に事故情報が登録されることを意味しています。
信用情報機関の情報は銀行や貸金業者等が確認することができるため、信用情報機関に事故情報が登録されると、その後一定期間ローンが組めない、カードが作れないといった状況になります。
上記のとおり、完済後の過払い金返還請求を行っても、信用情報が傷つくことはありませんので、このような支障は過払い金返還請求を行っても基本的にはないということになります。
もっとも、請求する相手方は当然ながら過払い金返還請求を受けたという事実を認識していますし、情報もある程度長期にわたって保管することが予想されます。
そして、貸金業者内部の独自の判断により、過払い金返還請求を行った相手方との関係について、新たにローンを組めなくなる等の不利益が生じる場合があります。
信用情報機関に事故情報が載ることを俗に「ブラックリストに載る」等と言うことがあり、請求する相手方のみブラックリストに載ったような状況となることから、「社内ブラック」等と呼ばれることがあります。
もっとも、あくまで相手方のみですので、別の業者から借り入れなどをするにあたり、過払い金返還請求をしている事実が影響を与えることは原則なく、デメリットはごくわずかと言ってよいと思います。
4 まずはご相談ください
以上のとおり、特に完済後の過払い金返還請求に関してのデメリットはほとんどないといえるかと思います。
残債務が残っている場合でも、過払い金返還請求の方法等はありますので、過払い金返還請求をご検討中の方は、まずは弁護士にご相談いただければと思います。
過払い金の請求にかかる期間
1 過払い金請求のご依頼から支払いまで
過払い金返還請求を検討しているけれど、手続にどれくらい時間がかかるのか分からない、という方も多いと思います。
ある程度前後するところはありますが、大まかなタイムスケジュールについてご説明いたします。
2 過払い金の存否の調査
はじめに、そもそも過払い金があるか否かがわからなければ手続きは進みません。
そこで、過払い金請求の手続きは、過払い金の調査を行うところから始まります。
基本的には、貸金業者からの取引履歴を取り寄せ、何月何日にいくら借りた、いくら返した、という過去の取引経過を確認します。
取引履歴から利息制限法の利率に引き直して過払い金の存否、額等を算定していきます。
これを「引き直し計算」等と言います。
引き直し計算自体は、数日から2週間程度で行うことができるものです。
3 請求、交渉
過払い金の額が確認できたら、それを貸金業者に請求します。
過払い金返還請求は、計算して算出された額を請求すれば自動的に満額支払われるというものではありません。
また、取引経過によっては争点があることもありますし、争点に対する過去の裁判例の判断が分かれているようなこともあります。
例えば、裁判所がこちらに不利な判断をした場合に過払い金の返還が1円も認められない、というケースも無いわけではありません。
そういった個別の事情を踏まえて、交渉を進めていくことになります。
内容によってばらつきもでますが、交渉期間は1~2か月程度くらいかと思います。
話し合いで合意解決する場合、その後の返還については、合意後3か月~6か月程度後になることが多いかと思います。
内容によっては、10か月後、等と言われることもあります。
4 裁判
交渉で合意に至らなかった場合には、裁判をすることになります。
上記3のとおり、裁判所がこちらに不利な判断をすることで金額が減ったり、1円も受け取れなくなったりすることもありますので、すべての事案で裁判をするとは限りません。
また、早期解決を優先される場合には、時間がかかる裁判を選ばれない方もいらっしゃいます。
裁判をした後でも、訴訟上の和解が成立することも多いですし、判決まで進むこともあります。
裁判にかかる期間としては、3か月から6か月程度になる場合が多いかと思います。
なお、事案によっては上級裁判所に控訴される場合があり、判決からさらに半年程度かかることが多いです。
過払い金返還請求で必要となる費用
1 取引履歴の開示
過払い金返還請求を行うには、まず過払い金があるのか、あるとしていくらあるのかを調査する必要があります。
貸金業者側で過去の取引の経過についての情報を保管しているため、まずはこの取引経過に関する情報、取引履歴の開示を行います。
開示について、貸金業者によっては費用が掛かる場合があります。
基本的には取引履歴がないと過払い金の存在自体がわからないため、取引履歴開示の費用は、過払い金返還請求を行うにあたって必要な費用となってきます。
2 弁護士費用
過払い金返還請求を行う際、弁護士に依頼しなければ手続きができない、というわけではありませんので、絶対に発生する費用、というわけではありません。
もっとも、裁判対応等も踏まえて過払い金返還請求について専門家に依頼している場合が多いかと思います。
過払い金の計算や、争点を主張された場合の対応・交渉、まとまらなかった場合の裁判対応までを見据えて弁護士等に依頼するとすれば、弁護士費用も考慮しておく必要があろうかと思います。
弁護士費用については、事務所ごとに契約内容等も違ってくるところですので、事前によく確認されることをお勧めいたします。
3 裁判費用
紛争が生じた場合に、全件裁判まで進むわけではありません。
どちらかと言えば、事件の大半は裁判の前に話し合いなどで終結している方が多いといえます。
過払い金返還請求も、当然ながら裁判をすることが決まっている、というわけではありません。
人によっては、早期解決の希望が強く、時間のかかる裁判をするよりも話し合いでの解決を優先する方もいます。
ただ、過払い金返還請求については、裁判をした方がよいと考えられるケースが少なからずあります。
過払い金の請求にあたっては、実際に払い過ぎたお金と考えられる過払元本と、現時点まで過払い金の返還を受けていないことによって生じる過払利息があり、場合によっては100万円を超える利息が発生していることもあります。
しかし、貸金業者が交渉段階で過払利息分を支払う旨の回答をしてくることが少ないため、過払利息まで回収するためには裁判をする必要が出てきます。
そのため、事案ごとではありますが、裁判費用も視野に入れておいたほうがよいかと思います。
なぜ過払い金が発生するのか
1 過払い金が発生する前提
なぜ過払い金が発生するのかといえば、理由は単純で、文字通り「払い過ぎ」があるからです。
では、なぜ払い過ぎが生じるのかということになりますが、これは改正前の法律の影響によるものとなります。
問題となるのは、改正前出資法と、利息制限法です。
2 グレーゾーン金利
グレーゾーン金利という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
これは、改正前の出資法と利息制限法とで生じていた利率の差によって生じていたものです。
改正前出資法は、最大で29.2%までの利率を許容していました。
貸金業者は、これを根拠に、上限の29.2%や25%等の利率で貸付けを行っていました。
他方、利息制限法上の上限金利は、金額に応じて15%から20%までと定められていました。
3 グレーゾーン金利での返済分の取り扱い
上記のとおり、貸金業者は、利息制限法上の上限利率を超えた取引を継続していたわけです。
例えば、3万円の返済を受けたときに、グレーゾーン金利に基づき、1万円を利息分、5000円を元本分の返済として受け取ったとすると、元本は5000円しか減らないことになります。
しかし、利息制限法の金利にしたがって計算し直すと、実は利息として受け取ってよいのは7000円までだったとします。
そして、借主からすると、借金を減らしたいと考えるのは自然なことですから、利息として貸金業者が受け取っていた3000円分の差額については、元本への返済として扱うべきことになります。
元本が減れば、当然そこにかかってくる利息も減りますし、完済時期も早まります。
長期の取引を繰り返していく中で、計算し直すと、実は数年前には完済していた、という結果になります。
完済後は、そもそも借金がないのに貸金業者に支払い続けている状態になるわけで、貸金業者は受け取っていてよいお金ではないものをずっと受け取り続けていた、ということになります。
過払い金の返還請求というのは、このように、利息制限法に引き直して計算すると、既に完済し、さらに追加で支払いまでしていた分についての返却を求める手続き、ということになります。
過払い金返還請求における弁護士法人心の強み
1 過払い金返還請求の豊富な解決実績
当法人では、これまで数多くの過払い金返還請求の事案を解決してまいりました。
解決実績の数だけ、多くの経験が蓄積されており、複雑化している過払い金返還請求における争点への対応等もスピーディに行っています。
解決件数が多いため、各事案における見通しなどの精度も高めることができており、交渉の方針等も見通しを踏まえて柔軟に対応することが可能となっています。
2 過払い金の請求に注力する弁護士が最初から最後まで対処
弁護士は法律に関する専門家ということになりますが、法律自体、どのような場面でも関係してくるものになります。
その結果、借金の問題以外にも、非常に広範な分野について、業務として従事することが可能です。
もっとも、多くの分野を手掛けようとすれば、個人の経験は分散されていき、各分野におけるより細やかな対応は難しくなっていくといえます。
この点について、比較的規模が大きく、弁護士数も多い当法人では、あえて担当分野を絞って事件にあたることで、担当分野についてより多くの経験を積むようにしています。
過払い金返還請求に関しては、過払い金返還請求を含む借金問題の対応を集中的に行っている弁護士が対応しています。
また、当法人では、ご相談の段階から事案終結まで、基本的に担当弁護士が担当しますので、安心してご依頼いただけます。
3 担当する事務スタッフも過払い金の分野に集中しています
弁護士だけでなく、担当する事務スタッフも、過払い金返還請求を含む借金問題を集中的に取り扱っています。
過払い金の分野に集中して取り組む弁護士とスタッフとで連携して対応することで、適切かつスピーディな対応が可能となっています。
4 費用についても抑えることができています
過払い金の分野に集中的に取り組む弁護士とスタッフとで事件処理にあたることにより、業務効率化を進めることができているため、一般的な過払い金返還請求のご依頼の相場よりも低価格でご依頼ただける体制を実現できており、これも弁護士法人心の強みといえます。
過払い金返還請求の流れ
1 取引履歴の開示
過払い金があるかないかを調べるため、まずは貸金業者に対して取引履歴の開示を求めます。
よほど古いものでない限り、各貸金業者は過去の取引経過に関する資料を保管しておりますので、取引履歴を開示することにより、何月何日にいくら借りたのか、何月何日にいくら返したのか、という過去の取引経過を明らかにすることができます。
取引履歴を取得しただけですべてが分かるというわけではありませんが、過払い金は、ある程度過去からの取引開始でない限り発生しません。
そのため、取引開始時期が比較的新しいことが確認できれば、過払い金がないという結果については、比較的早期に分かります。
2 引き直し計算
利息制限法で定められた上限金利は、債務額に応じて15%~20%とされています。
この上限金利を超えた契約で借入れ返済を続けている場合に、過払い金が発生することになります。
取引履歴の開示により、上限金利を超えた取引が行われていることが確認できたら、そこから引き直し計算を行い、金額を出していきます。
引き直し計算というのは、上記の上限利率で貸し借りしたものとして計算し直すものです。
3 過払い金の請求・交渉
引き直し計算ができたら、さっそく相手方に対し、過払い金の返還を求めて請求を立てます。
相手方との交渉期間はおおむね1~2か月程度です。
最近の過払い金返還請求においては、比較的細かい争点が問題となることも少なくありません。
そして、争点に対する判断次第では、数百万円の支払いを受けられるか、1円も戻ってこないか、という大きな違いが生じる場合もあります。
争点と裁判での勝訴の見込みなどを踏まえて交渉を進めていくことが必要となる事案もあります。
話し合いでまとまる場合は、貸金業者と和解書面を取り交わし、入金確認後、精算をして終結となります。
4 裁判
話し合いでの解決ができなかった場合には、裁判に移行します。
裁判では、おおむね1か月程度の期間ごとに期日が設定され、双方の主張、反論が展開されていきます。
最後まで折り合いがつかなければ半年から1年程度を経て判決まで至りますが、裁判の途中で和解が成立する場合も少なくありません。
なお、裁判をするかしないかを弁護士が勝手に決めてしまうことはありませんので、ご安心ください。
メリット・デメリットを踏まえ、お客様のご意向を確認しながら進めさせていただきます。
過払い金が発生する理由
1 どうして過払い金が発生するのか
契約どおりに借り入れをして返済をしていただけなのに、なぜ払い過ぎ、という事態が生じることになるのでしょうか。
過払い金が発生する理由について、順を追ってご説明いたします。
2 グレーゾーン金利下での返済
現在はほぼ齟齬がなくなっていますが、以前は、利息制限法という法律と出資法という法律それぞれにおいて、上限となる金利が異なっていました。
利息制限法は金額に応じて15%~20%、直近の改正前の出資法では29.2%が金利の上限とされていました。
29.2%以下であれば刑事罰の対象にはならなかったため、貸金業者としては、最も利益が大きくなる29.2%を利息の上限と判断し、利息制限法で定められた以上の利率で貸し付けを行っていました。
出資法の上限である29.2%と利息制限法の上限である15%~20%の間が、刑事罰にはならないが法律には違反しているグレーゾーンになります。
(この間の金利を「グレーゾーン金利」といいます。)
このグレーゾーン金利の返済について、後々の裁判実務において、支払う必要のない払い過ぎた利息という扱いになったため、過払金が発生するわけです。
3 払い過ぎた返済の取り扱い
過払金の仕組みについては、実際の計算例をみるとイメージがしやすいかもしれません。
例)100万円の借金を29.2%/年の利率で借り入れをした場合
100万円の借金を借りると、1年間で100万円×29.2%=29万2000円の利息がかかります。
つまり、50万円を返済すると、29万2000円の利息が取られて、20万8000円借金の返済が進み、残りの借金は79万2000円になります。
しかし、利息制限法の15%の利息で計算すると、利息は1年間で100万円×15%=15万円となるため、29.2%のときとの差額14万2000円が払い過ぎということになります。
これが過払金です。
そして、50万円を支払うと、本来は借金の返済が35万円進んでいることになるため、残りの借金は65万円になります。
これが毎月毎月の返済で起こっていたとすると、債務者の想定よりも早くどんどん借金は減っていき、気が付けば既に借金がなくなっている、ということになってきます。
しかし、通常債務者がそのことを知るわけもなく、貸金業者も受領してよいものであるとの判断のもと、さらに何年も返済を続けていくことになります。
しかし、すでに借金はないはずだとすると、その後の返済はすべて払い過ぎになるわけです。
これを何年も続けていくと、どこかで過払い金が借金を上回りお金を請求できるようになります。
4 払い過ぎたお金は返還を求めることができます
以上のような経緯で、過払い金が発生することになります。
前提として、グレーゾーン金利下で契約し、取引を開始していないと過払い金は発生しませんが、当時の利率が何%だったか、と聞かれても、すぐにわからない方の方が多いと思います。
昔から借り入れをされていたような方は、過払い金があるかどうか、一度弁護士に相談することをおすすめします。
過払い金の相談で必要となる資料について
1 過払い金の相談の際に必要な資料・情報
弁護士と相談する前に、どのような事前準備が必要となるか気にされている方もいらっしゃるようです。
過払い金の返還請求をご相談いただくにあたって、どのような資料を用意しておくとよいか、いくつか例を挙げさせていただきます。
2 取引履歴
過払い金があるかないかを調査するために必須の資料となるのは取引履歴です。
これは過去にの貸金業者から「いつ」「いくら」借りて、「いつ」「いくら」返したのかを一覧にした履歴です。
「そんな昔の記録があるのか?」と疑問に思われるかもしれませんが、基本的に貸金業者には取引履歴の保管義務があるため、よほど古いものでない限り開示することできます。
取引履歴だけ見るだけでは、過払い金がいくらかはわからないですが、専門家の方で「引直し計算」という専門的な計算を行うことで、「過払金があるかないか」「いくらの過払い金があるか」などが判明します。
事前に取引履歴を取り寄せていただいた場合、弁護士法人心では過払い金無料診断サービスがありますので、過払い金が請求できる可能性があるかないかを確認してから、依頼するかどうかを決めることできます。
もっとも、ご依頼後に弁護士の方で取り寄せることもできますので、取引履歴の用意がなければ相談はできない、というものではありません。
その際には、注意点もありますので、詳細はお問合せください。
3 信用情報
過払金請求は、借入先から取引履歴を取り寄せるところから始まるため、借入先がわからないと次に進めません。
どこの貸金業者から借入れをしたか覚えていない、という場合には、信用情報機関から信用情報の取り寄せをしてみてください。
信用情報機関では、貸金業者や銀行などからの借入の情報を管理しており、大手の業者であれば一覧で確認することができます。
そこまで古いものでなければ、信用情報機関からの開示結果によって請求先が明らかにできる場合があります。
こちらの資料も、用意できないと相談を受けられない、ということはありませんが、相手方がわからないとご依頼をいただくことができないため、結果的には「信用情報を取り寄せてみてください」というご案内をしていったんご相談が終わることになるかと思います。
信用情報については、簡単に言えば個人の借金の情報という、かなりセンシティブな情報となってきますので、ご自身で取り寄せていただくのが手続き的に最もスムーズです。
読み方がわからない、という場合には、取り寄せた開示資料をお見せいただければと思います。
4 借入時の情報
これは必ずしも必須の情報ではありませんが、取引履歴を取り寄せる際貸金業者から開示を求められる場合があります。
主な情報は、借入当時のご住所、ご結婚等で改姓されている場合の旧姓等です。
貸金業者が、氏名や住所などで借金の情報を管理をしているため、借入時の住所と現在の住所が異なると、問い合わせても借金の情報が出てこない場合があります。
借入当時のご住所等の情報がなくても開示できる場合も少なくありませんので、相談までに用意しておかなければならないものではありません。
5 まずはお気軽にご相談ください
以上のとおり、事前にあるとスムーズなものはありますが、過払い金の返還請求に関するご相談について、事前に用意しておかなければならない、というものはほとんどないといってよいかと思います。
過払い金請求は時効に注意しなければならないため、用意するものなどについて悩まずに、まずはお気軽にご相談いただければと思います。
過払い金を計算する方法と具体例
1 過払い金発生の前提
当たり前といえば当たり前ですが、過払い金というのは、お金の払い過ぎがあることによって発生します。
なぜ貸金業者との契約通り借入れ・返済を続けていたのに払い過ぎることがあるのかというと、貸金業者が利息制限法以上の利率で貸し付けをしていたからです。
利息制限法は、総債務額に応じて15%~20%を上限利率としていますが、改正前の出資法では、最大29.2%までの利率が許容されていました。
この利率の差が、払い過ぎが生じる前提となります。
2 過払い金発生の経過
利息制限法の上限を超えた利率が設定されていると、毎月の支払いについて、本来最低限支払うべき額以上の支払いをしていたことになります。
このはみ出た支払については、債務を早期に清算したいという債務者の通常の発想に従えば、借り入れ元本への支払いと取り扱われるのが自然です。
はみ出た支払分が元本返済に充てられると、その後の支払額も利息も少しずつ減っていき、ついには借金を払い終わるという状況になります。
ところが、リボルビング払いなどで、債務者は自覚なく同じ額を毎月のように支払い続けていますので、完済後の一時点以降の返済は、すべて払い過ぎということになります。
こうして、数十万円、ときには1000万円を超えるような過払い金が発生していくことになるのです。
3 計算方法と具体例
上記を前提に、過払い金の計算を行っていくことにします。
過払い金の計算は、ある程度はエクセル等で計算できてしまうところではあります。
では実際に具体例で見てみたいと思います。
当初100万円を29.2%の利率で借り、毎月3万円ずつ返済したと想定して計算すると、完済までに約5年半かかります。
これを利息制限法に基づき引き直すと、100万円に対する上限金利は18%となり、計算上約4年の時点で完済となります。
その結果、その後の返済についてはすべて完済になり、さらに利息までついて、自分が完済したと思った時点での利息を加えただけでも70万円以上の過払い金があることになります。
過払い金返還請求で弁護士を選ぶ際のポイント
1 過払い金返還請求のご相談は弁護士へ
過払い金返還請求については、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、司法書士と異なり、取り扱うことができる金額の制限等がないため、最後まで対応することができるからです。
ここでは、どのような弁護士を選べばよいのか、選び方のポイントについてご説明できればと思います。
2 専門性
過払い金請求事件は全国各地で裁判が行われており、日々新たな裁判が出ています。
一昔前と比べると細かい争点についての主張が増えてきていたり、裁判所の判断の傾向が変わってきていたりする部分もあります。
こういった状況の中で、ある程度過払い金請求事件に集中して取り扱っている弁護士に依頼した方が、事件の見通しやリスク等の見通し、最新の傾向に合わせた対応を期待することができます。
3 経験・実績
上記のとおり、近時は過払い金請求事件の争点も多様化しています。
そのため、取り扱った件数が少ないと、あまりなじみのない争点については争った経験がないという場合もあり得ます。
また、ある程度取り扱い件数が多い方が、経験に基づく対応を期待することができます。
対応した弁護士自身が取り扱ったことがない場合でも、同じ事務所に所属する他の弁護士に対応経験があるといったこともあり得ますので、ある程度の事務所の規模感も弁護士選びのポイントとなり得ます。
4 人柄
特に正解や決まった指標があるわけではないですが、自分の事件を任せたいと思えるかどうかというのは、ある意味で最も重要なポイントになり得ます。
例えば、穏やかな人柄の弁護士に依頼したいと考える方もいるでしょうし、その穏やかさについて頼りないという印象を持たれる方もいますので、人柄に対する評価も人それぞれで変わってくると思います。
そのため、ご依頼を決める前に、お電話であっても、対面であっても、その弁護士に依頼しようか、よくご検討いただくとよいと思います。
場合によっては複数の事務所、弁護士に相談してから決めるということでも構わないと思います。
5 弁護士費用
忘れてはいけないのは弁護士費用です。
極端に差があることは少ないですが、弁護士事務所ごとに報酬規程は同じではありません。
過払い金返還請求の場合、例えば交渉のみで終結する場合と裁判を起こす場合とで報酬の計算方法が変わるという契約内容になっていることがあります。
通常であれば、弁護士は依頼の際、報酬の計算方法等について説明してくれるかと思います。
費用については誤解のないように、相談時によく確認されるとよいです。
過払い金と利息
1 過払い金の元本と利息
過払い金は、文字通り払い過ぎたお金ということになります。
払い過ぎたお金の返還を求めるのは当然として、このお金(過払い金の元本)に対して、利息がつくのではないか、という点を考える必要があります。
2 過払い金利息の内容
過払い金があることが確認できた場合には、貸金業者に対して、交渉や裁判等によって回収を図ることになるわけですが、この過払い金返還請求権は、民法上、基本的に不当利得返還請求権と考えられています。
不当利得返還請求権に関する条文には民法703条と704条があり、704条には、「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない」と書かれています。
法律用語としての悪意、善意というのは、通常、事実の知、不知のことを指します。
日常で使う「善意で(=良かれと思って)手伝ってあげる。」「悪意(=悪気)があってやったわけではない。」といった、善意、悪意という言葉とは意味が違います。
過払い金返還請求における「悪意の受益者」というのは、「過払い金が発生していることを知りながら(=悪意)返済を受け取っている者」という意味になります。
3 過払い金利息の割合
過払い金の利息の割合は、一般的に5%です。
これは、令和2年4月に改正される前の旧民法404条2項が「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分(=5%/年)とする。」として、年5%の利息を法定していたからです。
令和2年4月改正後の新民法では、法定利率は年3%に変更されました。
4 過払い金の利息と実務
裁判においては、ほとんどの事案で貸金業者側は「悪意の受益者にあたらない」旨主張してくるものの、既に最高裁判決が出ており、よほどのことがないと、貸金業者側の主張は認められていないというのが実情です。
しかし、あくまで貸金業者側としては、悪意の受益者であるか否かについては争うスタンスであることもあり、裁判外の交渉場面においては、過払い金の利息分までの支払いを認める合意が成立することは多くありません。
言い換えれば、過払い金の利息まで回収を目指す場合には、裁判をすることも視野に入れる必要がある、ということになります。
5 過払い金請求で必ず訴訟をすべきか
たしかに、過払い金の利息まで回収することをつきつめていくと、「過払い金の利息まで払わないなら全ての請求で裁判すればよい」という考えにもなってきますが、実際のところ、必ずしもそうとは言い切れません。
過払い金請求の事案においては、例えば「こちらの請求が全面的に認められれば過払い金の元本70万円+過払い金の利息30万円となるが、認められなければ0円」というケースもあります。
この場面において、貸金業者側から「30万円なら支払う、合意できなければ提案は白紙に戻し、0円となるよう裁判で戦う」という提案を受けた場合、この提案に応じるべきでしょうか?
「確実な30万円を取るか、0円or100万円を目指すか」と考えると、なかなか難しい問題です。
もちろん、過去の裁判例等からある程度の見通しは立ちますが、裁判である以上、勝つか負けるかを確実に予測することは困難です。
6 過払い金請求に詳しい弁護士にご相談ください
弁護士法人心では、数多くの過払い金返還請求案件を取り扱っております。
どのように進めていけばよいかは、案件ごとに千差万別です。
過払い金の返還請求についてご検討中の方は、横浜駅近くの弁護士法人心 横浜法律事務所までご相談ください。
過払い金返還請求の裁判
1 過払い金返還請求に関する過去の裁判と争点
過払い金請求訴訟というのは、全国的に数多く起こされており、多数の判決が出ています。
裁判になっている理由は様々ですが、多くの場合には、双方の主張に争いがあり、特にその争点に対する判断結果によって、そもそも過払い金の請求が認められるかどうかが変わる場合、判断次第で数百万円金額が変わる場合等で、最後まで折り合いがつかず、判決まで至っているということが多いかと思います。
2 過払い金請求訴訟の争点は少なくない
最高裁判所は過去の判断を変える(判例変更する)ことがあるので、かならずしも完全決着とは言い切れませんが、通常は、ある争点について最高裁判所で判決が下されると、下級審(高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所)はその最高裁判所の判断を前提とした判断をするようになっていきます。
過払い金請求に関する争点では、まだ最高裁判所で判断の出ていないものもあり、複数の高等裁判所で異なる判断となっているものがあるような場合もあります。
結果として、借主側に有利な裁判例、貸金業者側に有利な裁判例が乱立していることも少なくありません。
では最高裁判所の判決がある争点については争われないのかというと、判決はあくまでその事案に対する判断でしかないという側面もあります。
また、取引経過は事案ごとにまちまちです。
そうすると最高裁判所の判断が出ている争点であっても、「あの最高裁とは●●という点で取引経過が違うので結論も異なるはずだ」等と争われることも少なくありません。
以上のような事情で、訴訟提起後、多くの争点に対する主張、反論をすることが求められます。
3 過払い金請求は弁護士にご相談ください
過払い金請求については、裁判外での交渉で折り合いがつかず、訴訟に発展することも少なくありません。
当法人では、これまでにも多くの過払い金請求のご相談をいただいており、多くの裁判を戦ってきた実績があります。
過払い金請求についてお悩みの方は、当法人までご相談ください。
名義貸しと過払い金返還請求
1 名義貸し
カードを作成した本人ではなく、元恋人等の知人やご親族がカードを利用して貸し借りをしているというケースがあります。
貸金業者がクレジットカード等を発行する際には、収入、資産等の資料の提出を求めて審査し、借入限度額等が決定されるものです。
これは、その収入、資産状況であればいくらまでは貸付けが認められるであろうという貸金業者側の判断であり、当然借入れに利用するのは本人だけであるということを前提としていますので、こういった状況は本来的にあまり望ましい状況ではないと思われます。
もっとも、審査後、カードが発行されてしまえば、無人のATM等で借入れや返済ができてしまう環境にあることから、現実にはこのような名義貸しの事案はゼロというわけではありません。
2 名義貸しの責任と過払い金返還請求
裁判実務においては、基本的に名義を貸した人(=カード名義人)について、責任も過払い金返還請求件もあると判断しているようです。
つまり、A名義のカードで借入れを行っている以上、その返済の義務を負うのは実際に借り入れをしたBではなく、名義人であるAになることになり、過払い金返還請求する権利についても、実際に貸し借りをしていたBではなく、カード名義人であるAとなるということです。
債務については「実際にお金を受け取っていたわけではないAが返済しなければならないのか」であるとか、過払い金についても「たまたまカードを貸していただけのAが過払い金を受け取ってよいのか」等、このような判断の是非については賛否両論あるかと思います。
とはいえ、外形上はA名義での貸し借りとなっているということをとらえれば、裁判実務における判断が絶対間違っている、とも言えません。
そのため、基本的に対貸金業者との関係については上記のような判断となる見込みが高いという前提で考えておくとよいかと思います。
実際に回収した過払い金をどうすべきかについては、貸金業者から過払い金を回収した後に、上記でいうAとB当事者間の問題となってくるものといえます。
3 過払い金返還請求のご相談は当法人まで
当法人では、これまでに数多くの過払い金返還請求の交渉や裁判等を行ってきました。
当事務所は、横浜駅の「きた東口A」より徒歩約3分の場所にありますので、相談にお越しいただきやすい立地です。
過払い金のご相談は当法人までお気軽にお問い合わせください。
過払い金返還請求が家族に知られないか心配な方へ
1 過払いの秘匿性
過払い金返還請求のご依頼をいただくにあたり、ご家族には「内緒にしたい」といったご要望をいただくことがあります。
内緒にしておきたいと考えるご事情は様々です。
過払い金返還請求のご依頼について、ご家族に内緒にして手続きを進められるのかについて、当法人での対応等も踏まえて以下でご説明したいと思います。
2 完済後の過払い金返還請求は信用情報に影響が出ません
完済後の過払い金返還請求に関しては、信用情報に傷がつく(いわゆる、ブラックリストに載る)ということは、基本的にありません。
そのため、例えば「過払い金返還請求後に車のローンを組もうとして審査が通らず怪しまれる」といったことは避けることができます。
過払い金返還請求をした貸金業者内部における取扱い(いわゆる社内ブラック)に関しては別途考慮する必要がありますが、過払い金返還請求をきっかけに、別の借入れやローンへの影響は出ないと考えていただいて大丈夫かと思います。
3 お電話、メール等でご相談いただくことが可能です
頻繁に弁護士事務所に来所したりすると、ご家族に内緒にし続けることは難しいかもしれません。
当法人では、完済後の過払い金返還請求の場合には、解決までご来所いただくことなく、お電話やメール等のやりとりのみで対応することも可能です。
もちろん、ご希望に応じて対面でのご相談も承っております。
メールだけで依頼を完結することはさすがにできかねますが、お電話でご相談した後の進捗報告等については、メールでのやりとりが可能です。
何度もよそに電話をしていて怪しまれるといったリスクについても回避することができるといえます。
4 郵送方法等にも配慮しております
通常は、事務所の名入り封筒等を利用して郵送をしていることが多いかと思いますが、ご希望に応じて、弁護士の個人名での送付等にも対応しております。
ご親族間であっても、個々の個人情報の保護は守られるべきものですので、適切に対応する必要があるといえます。
5 過払い金のご相談は弁護士法人心まで
上記のとおり、弁護士法人心では、ご依頼いただいたことそれ自体の秘密保持についても配慮して対応しております。
状況に応じた対応を心がけておりますので、「ご家族に内緒に進めたい」等のご希望がある方でも、まずはお気軽にご相談ください。
過払い金返還請求に強い弁護士に依頼するメリット
1 弁護士に過払い金返還請求を依頼するにあたって
過払い金返還請求を弁護士へ依頼するにあたっては、やはり経験、実績のある弁護士あるいは事務所に依頼することをおすすめします。
ここでは、弁護士に依頼するメリットについてご説明いたします。
2 最新の裁判動向等を踏まえた対応ができる
過払い金に関する裁判は現在も活発に起こされ、日々多くの判決が出ている状況にあるといえます。
争点によってはおおむね実務上固まりつつあるものもあれば、現在も結論が分かれている争点もあります。
結論について争いがある点が問題となった場合、当然それに対する適切な対応が必要になりますし、その事案の概要、証拠等からどこまで争っていくか、その見通しも立てておかなければいけません。
見通しの精度は多くの事件での経験を積み重ねることで高まっていくものです。
また、少しずつ実務上の情勢は変わっていくものであるため、今でも多くの過払いの案件を取り扱っているということも重要になります。
3 迅速な対応が期待できる
同じ分野について多くの案件を取り扱っていると、同一の案件に対する処理スピードは上がっていきますし、経験を踏まえて業務効率化も進んでいきます。
その結果、よりスピーディーな対応をしてもらえることが期待できます。
4 見通しの精度が高くなる
過払い金返還請求について、近時、争点に対する裁判所の判断次第では、多くの過払い金が認め得られるか、ゼロになるかという結論となるケースが少なくありません。
例えば2000年から貸し借りを繰り返して2009年に一度完済、その後2011年頃に取引を再開して2020年に再度完済、カードを返却したとします。
このように、過去に一度完済している場合、ここで取引が一度終わっており、完済前後の取引とは別物だといって争点になることがあります。
2010年に出資法が改正され、基本的に利率は過払い金の出ないものとなっており、主要な貸金業者は2007年頃には利率の引き下げをしていることが多いです。
そのため、別々の取引だと判断された場合、2009年に完済した取引の時効は2020年には時効が成立し、2011年に開始した取引には過払い金はないため、ゼロ円という結果になります。
この取引の一連性という争点は、裁判でも事案ごとに結論が分かれている争点となっているため、裁判上で戦うかどうかは難しい判断となってくるといえます。
こういった場合に、処理件数が多ければ、類似の事案においてどのような結果だったかを踏まえた対応が可能となってきます。
5 過払い金のご相談は当法人まで
当法人では、数多くの過払い金請求のご相談、ご依頼をいただいております。
横浜駅近郊にも事務所がございますので、過払い金返還請求についてご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
過払い金返還請求をするとブラックリストに載るのか
1 過払い金返還請求と信用情報(ブラックリスト)
借金を完済した後に過払い金の返還請求をする場合、ブラックリストに載ることはありません。
いわゆる「ブラックリストに載る」というのは、信用情報機関に事故情報が登録されることを指して使われることが多いです。
事故情報に登録される内容には、「返済の滞納をした」「自己破産をした」等、いくつか種類がありますが、簡単にまとめると、借入当時の契約通りの返済に支障が生じ、信用に疑義が生じたことといえるかと思います。
そのため、契約通りに返済を終えた後に過払い金を請求することは、信用を傷つけることにはならないといえます。
過去にはブラックリストに載ることもあったようですが、現在、完済後に過払い金の返還請求をしても、ブラックリストに載ることはありません。
2 完済していない状態での過払い金返還請求
上記のとおり、完済した後の過払い金返還請求であれば、ブラックリストに載ることはありませんが、言い換えれば、残債務がある状態での請求の場合にはブラックリストに載る可能性があるということになります。
いくつか類型がありますが、例えば、過払い金があるかもしれないと思って残債務がある状態で弁護士に過払い金返還請求を依頼したが、結果的にそもそも過払い金はなかったという場合がまず挙げられます。
この場合、「過払い金がないということであれば今までどおり返済します」と言ったところで、基本的にブラックリストに載ることは避けられません。
というのも、残債務がある状態で弁護士が介入した時点で、「債務整理」というかたちで事故情報が登録されることになるからです。
次に、過払い金はあったものの、債務の方が大きかった場合が挙げられます。
例えば当初の契約通りに計算すると現在100万円の債務になるところ、過払い金を考慮すると50万円になるとします。
この場合、残額の50万円に関して分割返済の交渉等を合わせて行うことが多いですが、扱いとしては任意整理に準じたものとなるため、任意整理と同様に事故情報が一定期間登録されることになります。
最後に、過払い金を考慮すると、残債務がなくなり、一部返還請求できる場合です。
この場合、貸金業者によって取り扱いが分かれるようですが、遅くとも過払い金の返還請求を受けた段階で、完済されたものと扱われることになるようです。
業者によっては、請求を受けた段階で完済扱いにする業者もいるようです。
3 過払い金返還請求をする際は弁護士にご相談ください
上記のとおり、タイミングによっては信用情報を傷つけてしまう場合があります。
どのように対処すればよいのかについては、過払い金返還請求に強い弁護士にご相談ください。
過払い金について裁判をお考えの方へ
1 過払い金請求の裁判をするか否かを決めるにあたって
過払い金の請求をする場合、まずは裁判外で交渉を行い、その後交渉経過に応じて裁判を提起するという流れになることが多いです。
事案ごとに状況は千差万別といえますが、以下のご説明をご覧いただき、裁判するか否かご判断いただく際の参考にしていただければと思います。
2 過払利息の回収を目指すケース
過払い金は、法的には不当利得(民法703条)と位置付けられます。
そして、本来受け取るべきでないお金であると知ったうえで受領していた場合(704条の「悪意の受益者」に該当する場合)には、利息を付して返還しなければならないものとされています。
裁判ではほぼすべての債権者が悪意の受益者ではない旨主張してきますが、最高裁判決を含め、大多数の裁判において債権者は悪意の受益者であると認定されているといえます。
払い過ぎたとされる過払い金それ自体を過払元金、上記の過払い金に対して発生する利息(悪意の受益者として支払うべき利息)を過払利息と呼ぶことがあります。
何年も前に払い終わっていたという方の場合、数十万円もの過払利息が発生していることは少なくありません。
しかし、多くの貸金業者は、裁判外の交渉段階で過払利息を含めた返済額を提示するケースはあまり多くありません。
過払元本のさらに何割かという提案となることさえあります。
そのため、増額を目指すためには、基本的に裁判を選択する必要があります。
3 争点の評価によって結論が大きく変わる場合
例えば、過払元本、過払利息含めた最大限有利な金額が100万円、しかし、争点に対する裁判所の判断によっては0円となる可能性があるとします。
上記の状況下で、例えば交渉段階で40万円提案されていたとして、この提案を受け入れるでしょうか。
あるいは100万円の回収を目指すでしょうか。
負けた場合に交渉前よりも金額が下がってしまう可能性が高い場合には、あえて交渉段階で終えるという選択も間違いではないと思います。
もちろん、争点の判断について勝つ見込み、負ける見込みがどの程度かにもよりますが、増額を見込んで裁判という選択も当然考えられます。
このあたりは事案ごとの勝訴の見込み、依頼者の方の重視すべき点などによっても方針が変わってくると思います。
4 過払い金の裁判は弁護士にご相談を
最終的には裁判所の判断とはなりますが、裁判をした方がよいか、増額の見込み等について、過去の裁判例等を踏まえてできる限りのご案内をさせていただきます。
過払い金の請求をご検討中の方は、当法人までご相談ください。
過払い金の有無を考えるときの注意点
1 銀行からの借入れと過払い
お金を借りる相手は、貸金業者だけでなく、当然銀行も考えられます。
しかし、銀行からの借入れの場合、通常過払い金の発生はありません。
以下では、その理由について説明していきます。
改正前出資法では、最大29.2%の利率で貸付けをすることを許容していました。
他方、現在も適用されている利息制限法は、金額に応じて15%から20%の利率しか認めていません。
この差が払い過ぎを生み、長年の払い過ぎが積み重なって過払い金となるわけです。
しかし、銀行は、以前から利息制限法が定める上限金利を超えた利率での貸付けを行っていません。
つまり、払い過ぎという状態になることがないので、過払い金は発生しないことになります。
2 ショッピング利用と過払い
ショッピングでクレジットカードを利用し、リボ払いにする場合があると思います。
その場合でも分割手数料が発生していますが、これも過払い金が発生する場合があるでしょうか。
結論として、過払い金の発生はありません。
過払い金発生の仕組みとして、改正前出資法と利息制限法がかかわっているというのは上記1のとおりです。
他方、いわゆるショッピング利用の場合に適用されるのは、割賦販売法です。
そのため、「分割手数料」の発生について、利息制限法や改正前出資法の適用はなく、過払い金は発生しないことになります。
3 注意点
上記で、銀行からの借入れとショッピング利用時の過払いについて説明をしてきましたが、ここで注意すべき点があります。
1つは、「本当に銀行からの借入れかどうか」という点です。
銀行名と間違えやすい名前のカード会社は少なくありません。
例えば、「楽天銀行」と「楽天カード株式会社」、「三井住友銀行」と「三井住友カード株式会社」、「イオン銀行」と「イオンクレジットサービス株式会社」等です。
銀行で勧められて作ったカードが銀行のカードローンではなく、上記のような関連会社のカードである場合もあります。
カード会社からの借入れの場合には、過払い金が発生している可能性がありますのでご注意ください。
基本的には、カード裏面の発行元会社をご確認いただければ借入先が分かります。
もう1つは、「リボ払い」です。
リボ払いといっても、ショッピングリボやキャッシングリボがあります。
そのため、「リボ払いだから過払い金の発生はない」とは言い切れません。
4 過払い金の有無については当法人にご相談ください
上記のような点にご注意いただければ、過払い金の発生があるかないかについてある程度見通しが立てられるかと思いますが、もしご不安なようでしたら、当法人までお気軽にご相談ください。
横浜駅の近くにも事務所がありますので、周辺にお住まいの方はお気軽にご連絡ください。
過払い金の時効について
1 過払い金請求と時効
普段、「時効」という言葉を耳にすることもあるかと思います。
民法上も時効の制度はあり、過払い金請求権もまた一定期間を経過すると時効により消滅してしまいます。
テレビCM等で「過払い金請求のご相談はお早めに」等と告知しているのはそのためです。
2 時効完成の「起算点」
民法上、過払い金請求の時効は「権利を行使することができるとき」から10年で消滅するとされています(改正前民法166条1項、167条1項)。
では「権利を行使することができるとき」というのはいつかといえば、これは評価によって変わりうるものです。
この評価により、単に時効消滅するか請求できるかという問題だけでなく、取引経過によっては過払い金として認められる金額についても影響が出てくる場合があります。
3 複数の争点と時効の問題
時効に関する一番大きな問題は、そもそも過払い金請求が認められるかどうかという争点です。
わかりやすいのは、「最後に完済したとき」で、その他争点がない場合、ここから10年以内に請求して時効を争われるケースは多くありません。
10年を経過していても、年会費の支払いを継続していることもあります。
そうなると、まだ取引が完全に終わっているとも言い切れないため、過払の請求が認められる可能性が出てきます。
次に、よく争いになるのが、途中で一度完済し、しばらく取引がないようなケースです。
そういった場合でも、大した審査を受けることなく借入れが再開できたり、そもそも完済時に持っていたカードを使ってすぐATMから借入れが再開できたりする場合も少なくありません。
貸金業者は、利用者からお金を借りてもらい、利息込みで返してもらうことで収益を上げるわけで、基本的には借りてくれることを期待しているわけです。
そして、上記の例のようにいつでも借入再開できる状態を整えているといえます。
それにもかかわらず、過去に完済した事実があるからという理由を持ち込み、取引は分断されたものであると主張してきます。
こういった主張に対しては、しっかりと反論していく必要があります。
4 過払い金のご相談は弁護士法人心まで
当法人では、これまで多くの過払い金請求事件を取り扱ってきました。
横浜にお住まいで過払い金請求についてご検討中の方は、一度ご相談ください。
過払い金とは
1 過払い金が発生する前提
過払い金というのは、文字通り「払い過ぎたお金」です。
借金をするときには、返済を続けていくにあたって利息を支払わなければならない、という契約で借りるのはある意味当たり前です。
ではなぜ契約通りに払っていたお金が払い過ぎになるという事態が生じるのでしょうか。
この前提には、複数の法律が関係してきます。
改正される前の「出資法」(正式名称は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」で、出資法というのは略称です。)という法律では、最大29.2%の利率での貸付けを許容していました。
他方、現在も適用される「利息制限法」という法律では、①10万円未満までは20%、②10万円以上100万円未満までは18%、③100万円以上は15%という上限利率になっています(利息制限法1条)。
各貸金業者は、改正前出資法を根拠に、利息制限法の上限利率を超えて、債務額にかかわらず、25%や出資法で上限とされていた29.2%での貸付けを行っていました。
これが過払い金発生の前提事情となります。
2 過払い金発生の仕組み
上記を前提とすると、月々の返済について、一部は利息制限法の上限利率を超えた返済が生じることになります。
例えば、毎月3万円ずつ返済していて、そのうち1万5000円は改正前出資法を前提にした契約に基づき利息の支払いと処理されていましたが、利息制限法を前提とした場合には、本来1万円までしか利息として受け取ってはならなかったとします。
この払い過ぎた差額の5000円の取り扱いとしては、少しでも借金を減らしたいと考える借主からすれば、残りの元本への返済に充てられる、と考えることが自然です。
このような状態が積みあがっていくと、毎回の返済のたびに貸金業者の計算以上に元本への返済が行われることになり、最終的には何年も前に完済済みだった、という状態になります。
しかし、本人はそれを知らずにまだ払い終わっていないと思って返済を続けますし、貸金業者はそれを受領し続けている状態となるわけです。
すでに完済して債務がなくなっているのに払っているお金は、貸金業者が根拠なく不当に利得したもの、といえますので、過払い金返還請求を行い、その払い過ぎたお金の返還を求めていくことになります。
3 過払い金を請求するには
過払い金を計算するにあたって、まずは貸金業者から取引の履歴を取り寄せます。
基本的にはこの履歴に基づいて利息制限法に従って計算し直し、過払い金が出ていればその返還請求、交渉、裁判等を進めていくことになります。
取引履歴の取り寄せ先などがわからない、といったことなどからご相談いただくことも可能ですので、過払い金返還請求をご検討中の方は、当法人まで、まずはお気軽にお問い合わせください。